労働社会保険の手続き

中小企業経営者のための労働保険・社会保険手続きガイド

~人材を守り、会社を守る仕組みづくり~

◇ 労務の不安は「経営リスク」に直結します!

「社会保険や労働保険の手続きが複雑でよく分からない」
「顧問税理士に聞いたが詳しい説明はなく、結局自分で調べている」
「従業員から“保険証はいつ届くのか”と質問されるたびに焦る」

こうした悩みを抱える中小企業経営者は非常に多くいらっしゃいます。
法律は毎年のように改正され、届出の期限や提出書類も細かく規定されています。経営に集中したい社長にとって、労務対応は時間も精神力も奪う「見えないリスク」になりがちです。

一方で、労働保険・社会保険の整備は、従業員の安心感を高め、採用力を強化し、会社の信頼性を向上させる「攻めの経営ツール」でもあります。

本ガイドでは、中小企業が必ず押さえるべき労働保険・社会保険の基本、導入のメリット、費用の仕組み、実際の手続き、そして専門家に任せることで得られる安心感を、事例を交えながら分かりやすく解説します。


第1章  労働保険・社会保険とは?中小企業が知っておくべき基礎知識

狭義と広義の社会保険

狭い意味の社会保険:健康保険・介護保険・厚生年金保険

広い意味の社会保険:上記に加え、雇用保険・労災保険も含む

経営者として重要なのは、労働者を1人でも雇えば原則としてすべて対応が必要という点です。

各制度の役割

健康保険:従業員と家族の医療費負担を軽減(例:3割負担)

介護保険:40歳以上の従業員に必要。将来の介護リスクに備える制度

厚生年金保険:将来の年金給付を支える仕組み。国民年金より受給額が多い

雇用保険:失業時の給付や教育訓練給付。人材育成にも直結

労災保険:業務中の事故・通勤災害をカバー。従業員の安心感に直結します。

<例>

ある飲食店(従業員8名)は開業当初、社会保険未加入でした。
従業員から「将来が不安」という声が出始め、離職が相次ぎました。そこで社会保険を整備したところ、採用応募数が増え、結果的に人材の定着率も改善しました。


第2章  労働保険・社会保険のメリットは「経営の安定」
従業員にとってのメリット

医療費の自己負担軽減

出産・育児・介護休業中の給付

将来の年金への安心

<例>

20代女性従業員が産休・育休を取得し、出産手当金と育児休業給付を受給。安心して復帰できたことで会社へのロイヤリティが高まりました。

◇ 会社にとってのメリット

求人票に「社会保険完備」と記載でき、応募率が上がる/人手不足時代には重要!です。

従業員の安心感が高まり離職率が低下/同じくです。

行政からの是正指導リスクを回避

<例>

製造業のA社は、社会保険を導入後「求人応募数が2倍」に増加。採用コストが下がり、経営の安定化に直結しました。


第3章  費用の仕組みを正しく理解する
保険料の基本

健康保険・厚生年金:労使折半

雇用保険:労使双方で負担

労災保険:会社が全額負担

「コスト」ではなく「投資」。人的資本経営にもつながりますね。

<例>

ある小売業B社では、従業員20人で社会保険料年間約800万円を負担。
一方、毎年の採用・教育コストは1人あたり約100万円。離職率が下がり採用数が減ったことで、結果的に年間コスト削減につながりました。


第4章 手続きの流れと注意点

※ 主な手続きのタイミング

従業員を初めて雇った時(資格取得届)

毎年の算定基礎届・労働保険料の年度更新

出産・育児休業、病気休業の給付申請

退職時の資格喪失届

※ 手続きを怠るリスク

遡及加入による数百万円の追加徴収

従業員からの不信感

行政調査での是正勧告

<例>

従業員5人の建設業C社は、手続きを怠り3年分の保険料を遡及徴収され数百万円の負担に。以後、専門家に依頼して再発防止。


第5章  専門家に委託するメリット

電子申請による迅速対応

最新法改正に基づく正確な手続き

助成金活用の提案(キャリアアップ助成金等)

経営者が本業に専念できる環境づくり

<例>

IT企業D社では、社労士に依頼したことで助成金申請が可能に。年間200万円以上の資金確保につながりました。


第6章  事例紹介

ケース1:保険未加入で是正勧告
飲食業E社は未加入が発覚し、労基署から是正指導。加入後は求人応募が倍増しました。

ケース2:離職率改善
福祉業F社は社会保険導入後、従業員の安心感が増し離職率が半減。結果的に採用コスト削減につながりました。


第7章  まとめ

労働保険・社会保険は、会社を守り、従業員を守る必須の経営基盤です。
整備が遅れている企業は、早急に対応することで大きなリスク回避になります。

ポイント!

「自力・自社で完璧に行う必要はない」ということ。
専門家に任せることで、経営者は安心して本業に集中できます。

今こそ「労務の安心」を整備し、未来の経営基盤を築く一歩を踏み出しましょう。



弊所では労働保険(労災・雇用保険),社会保険(健康保険・厚生年金保険)に関わる手続きの書類作成代行・届出提出代行を行っております。迅速化を考慮して電子申請を行う場合があります。

(参考)

◇ 労働保険・社会保険について


1.労働保険・社会保険の種類

狭い意味での社会保険は,健康保険・介護保険・厚生年金保険だけを言います。

広い意味での社会保険は,上記に労働保険の雇用保険・労災保険を含めます。

1) 健康保険

健康保険は、従業員が病気やケガをした場合に治療や療養を受けられるようにする仕組みです。適用事業所の従業員や法人の役員は協会けんぽや健康保険組合の被保険者となって、保険料を支払うことで健康保険に加入することになります。健康保険の被保険者になると病気やケガで病院にかかった際、窓口での支払いが一般に3割負担などといわれる自己負担分のみで済むようになります。健康保険の被保険者でない場合は、かかった費用の全額を支払わなければなりません。
 更に,高額医療費に対する給付や病気やけが,出産などで働くことができなくなったときの給付があります。

2) 介護保険

介護保険は、40歳以上の人が加入でき、介護保険料を納めることにより介護が必要になったときに所定の介護サービスが受けられる仕組みになっています。介護保険の被保険者は、65歳以上の人は「第1号被保険者」、40歳から64歳までの医療保険加入者は「第2号被保険者」になります。第1号被保険者は、要介護認定または要支援認定を受けた際には介護サービスを受けることができます。また、第2号被保険者は、加齢に伴う疾病が原因で要介護認定、または要支援認定を受けた際に介護サービスを受けることができます。

3) 厚生年金保険

厚生年金保険は、従業員の将来や障害などの備えとなる公的年金制度です。健康保険と同じように被保険者となって保険料を支払うことで、老齢になったときに受け取れる年金額を増やしたり、障害を負った場合に厚生年金から年金受給ができるようにしたりします。

 ※ 健康保険や厚生年金保険の加入要件:被用者で,主に週30時間以上(大企業では週20時間以上)雇用される方。健康保険は75歳未満,厚生年金保険は70歳未満の方。
 ※ 加入対象となる方の範囲は法律で決められているので,個人の希望により加入したり脱退したりできるものではありません。
 ※ 国民健康保険との違い
 会社員や公務員は勤め先で社会保険に加入しますが、勤め人ではない自営業者などは健康保険や厚生年金保険には加入できません。自営業者などが加入する公的医療保険が国民健康保険で,市区町村kの窓口で手続きを行います。自営業者をはじめとして学生、職業に就いていない人など、会社員や公務員など勤め先で健康保険に加入していない人全員に加入義務があります。
 保険料は全額が被保険者負担となること、扶養という概念がありません。

4) 雇用保険

労働者の生活の安定や雇用の安定、就業機会の拡大などを目的に、
主に失業や育児などで働くことができなくなり給料が得られなくなった労働者に対して給付を行う保険制度です。

・失業者に対する求職者給付
・育児休業給付
・介護休業給付
などのさまざまな給付があります。

加入要件:1週間の所定労働時間が20時間以上で31日以上の雇用見込みがあること。

保険料は会社負担分と労働者負担分に分かれます。

5) 労災保険
・業務中・通勤中におきた災害に対する補償を目的とした保険です。
・保険料額の全額が事業主負担で労働者の負担はなし。
・労働者(パート・アルバイト含む)を1人でも雇用したら加入が必要です。
・加入義務があるのは事業主です。事業主が手続きを行います。(労働者に手続きなどはありません)
・保険料額は保険給付の内容からみると保険としてはとても安いです。

2.メリット
・従業員メリット
1) 毎月の医療保険の保険料額
 → 会社が半額負担。

(例)月額給与が20万円の場合(令和7年1月1日現在の大阪府での価額/金額は毎年変更されます。また都道府県ごとに異なります。)
40歳未満で健康保険料額20680円を労使折半 → 労働者負担額 10340円
40歳以上で健康保険料額23880円を労使折半 → 労働者負担額 11940円(介護保険料額を含む)

厚生年金保険料額 366000円を労使折半 → 労働者負担額 18300円

いずれも扶養家族がいても金額は不変。

△ 国民年金保険では個人が全額負担。(金額は16980円/1人あたり月額/令和6年度)
厚生年金保険にあたる国民年金基金の保険料額は別途(契約内容による)。
国民健康保険料額は市町村ごとに異なる。

※ 20歳以上の扶養家族がいるのであれば保険料額の負担だけでも社会保険加入にメリットがある。

※ パート従業員の社保加入については注意!
 配偶者の扶養からはずれると負担が増加する場合がある。

2) 年金額・傷害保険遺族年金保険・傷病手当金出産手当金・育児休業給付などの給付

 ! 労働者側は,費用以上に安心感を求めているようです。

・会社メリット

※ 主に,人材確保・人手不足対策
!会社にとっては費用的には,経費(損金)の増加しかない。(法人の場合は保険料額しだい)

1) 募集・採用
 パートだけよりも,「パート+社員」として求人する方が応募者の幅が広がり数的にも大きくなる。
 求人票にも書きやすい。

2) 従業員の継続雇用 … 従業員の離職率が低下する。
 → 経営計画・人事配置計画を立てやすいこと。
 → 募集採用の手間・費用が減少する。
 会社業容を拡大するのであればメリットはとても大きい。

3) 従業員の雇用管理・配置など
 従業員の労働時間を週当たり30時間~40時間程度にできるので計画をたてやすい。
 ある程度の時間外労働も見込める。(36協定必要。手当が別途発生)

3.費用
・初期費用は不要。
・健康保険厚生年金保険料額は労使折半
・雇用保険料率は1.55%~1.85%(令和6年度)でこのうち労働者負担は0.6%~0.7%(令和6年度)
(参考)厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000108634.html

・労災保険は全額会社負担。

4.手続き

※ 管轄
健康保険(介護保険含む)・厚生年金保険 … 年金事務所
雇用保険 … ハローワーク
労災保険 … 労働基準監督署

1) 労働者をはじめて雇用したとき。(詳細は下のページにて)
適用事業所の届出 + 労働者の加入の届出で

労働基準監督署 → ハローワーク → 年金事務所
の順になります。
(労働者が社会保険加入要件を満たしていない場合はハローワークまで,
労働者が雇用保険の加入要件を満たしていない場合には労働基準監督署だけ,
となります。)

2) 労働者の雇用が2回目以降のとき。
労働者の加入の届出
ハローワーク → 年金事務所
の順になります。

3) 労働者が離職したとき。
労働者の資格喪失の届出

ハローワークと年金事務所です。

※ 労働契約の変更時にも資格取得・喪失の手続きが必要な場合があります。

4) 1年に1回の届出
・労働保険の年度更新
・社会保険の算定基礎届

5) 随時
・産休育休の届出
 年金事務所 + ハローワーク

・傷病等による休業
 健康保険協会

6) 保険料の納付について

a.労災保険と雇用保険 : 銀行からの振り込み
 労働保険関係成立時
 労働保険関係終了時(会社で雇用する労働者が0人なったとき)
 それ以外は毎年1回(6月1日~7月10日)

雇用保険料の労働者負担分は毎月の給与から控除して会社で預り金としておく。

b.健康保険(介護保険含む)と厚生年金保険

毎月の労働者負担分の保険料を給与から控除し,翌月に会社負担分と合わせた額を銀行から振り込み。
振込用紙(納付書)は年金事務所から送られて来ます。








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