御社とその会社理念は世界中にひとつだけしかありません。
ならばその理念を具現化具体化する会社と運営方法も世界でひとつだけしかないはずです。
理念も会社の存在目的も従業員の働き方も会社ごとに異なります。ならば,その運営の仕組みは会社ごとに違うものになります。他の会社の就業規則と同じでよいはずはないのです。他の会社と同じような内容の就業規則・服務規程だとすると,自社は他の会社と同様な理念や経営でよいということになります。
就業規則を作成しているがその内容・文面まではそんなに詳しくないという事業主の方に「就業規則は会社を守るためのもの」だとおっしゃる場合に多く出くわしました。
この「会社を守るためのもの」というのは一面では正しいものです。就業規則がなければ会社を守ることはできません。ただこのような就業規則はどうしても「会社を守る」ための文章が並びます。このために「べからず集」に近い比較的後ろ向きの文面が並んでしまい正直従業員が読みたくなくなるような条文の並びになります。
※実際に多くの就業規則を拝見しましたが,あれをしてはいけない,これをしては懲戒です,とばかり記載されているものも多々ありました。確かに懲戒のためには具体的にどんなことをすると会社にとって損害があり従業員に懲戒をするのが適当かがわかるように記載されていなければならないのですが,それだけしか記載されていないと従業員は条文を読んでもうれしくないでしょうから原則就業規則を読まなくなります。当然に社内の決まりについても疎くなってしまいます。
さて,じつは就業規則は,会社と社員のあるべき状態と進むべき方針を記載することができるものです。「会社を守る」だけでなく「会社と従業員を成長させる」ことができる内容・文面を盛り込むことができるのです。従業員は会社内でこのような姿勢や態度で取り組んでほしい,このような気持ちで業務にあたってほしい,そうすれば会社内のチーム,ひいては会社全体がよくなっていく,結果会社の利益を大きくして従業員に還元できる,という前向きな文言です。逆に良くない後ろ向きの姿勢,態度,気持ちでは会社内のチームや会社全体が停滞して従業員にとってもよいことはないと暗に伝えることもできます。
なので就業規則は前向きに「従業員を成長させ,会社を発展させる,会社を強くする」ためのものと言えます。
それらの文章は厚生労働省の「モデル就業規則」などでは”服務規律”や”表彰及び制裁”の条文に記載するところですが,その「モデル就業規則」ではそれらの取り決めがほとんどありません。会社・事業所の実情に合った形で会社・事業所ごとに丁寧に考えて従業員が前向きに働く事業所を目指していただきたいものです。