就業規則は社内運営のためのマニュアルとしての位置づけがあります。従業員が自ら就業規則を読んで社内の規定に従った手続きを能動的に行えるように作成できるものです。
厚生労働省のモデル就業規則(令和7年現在)では第18条に(遅刻早退欠勤等)という条文があります。
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第18条 労働者は遅刻、早退若しくは欠勤をし、又は勤務時間中に私用で事業場から外出する際は、事前に に対し申し出るとともに、承認を受けなければならない。ただし、やむを得ない理由で事前に申し出ることができなかった場合は、事後に速やかに届出をし、承認を得なければならない。
2 前項の場合は、第39条に定めるところにより、原則として不就労分に対応する賃金は控除する。
3 傷病のため継続して 日以上欠勤するときは、医師の診断書を提出しなければならない。
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とだけ記載されています。「事前に」とありますがそれは
・何時間前,何分前まででしょうか。
・申し出る方法は電話ですか,メールですか,社内イントラですか。
・承認を得るためには上長が対応しなければなりませんがその上長が出張等でいない場合には誰に対応をお願いしたらよいのでしょうか。
・承認は書類ですか,社内イントラ上のオンライン承認ですか。
・更には,やむをえない理由とは何でしょうか。事後速やかにとはいつまでですか。
・それらはどんな様式・書類・メールフォームですか。
上記のように具体的に考えるとモデル就業規則ではほとんどなにも具体的な手続きの進め方は何も決められていないのです。これでは従業員も就業規則を読みませんし,就業規則が使えるものであると考えません。まして中小事業所に多いことですが,手続きの方法について示した決まった文書等が作成されていなくてその都度従業員が上長や周囲の同僚に誰か知っている人はいませんか,どうしたらのよいのですか,と聞いていくような状況が発生します。これらは周囲の仕事も止めてしまうことになりますので会社の業務運営上とても非効率で生産性のうえからはとてもお勧めできないことは容易にご理解できると思います。
なので,
・就業規則本則に定めてしまうか,
・本則の一番後ろに附則としてつけておくか,
・就業規則本則上で「取り扱い規程による」として規程を就業規則とあわせておく,
ことになります。この取り扱い規程も就業規則の一部ですから労働基準監督署に就業規則を届け出るときには本則や育児介護休業規程などと一緒に届け出ることになります。
大きな会社や支社支店の多い会社では支社支店ごとに手続きの詳細を変更したほうが都合が良い場合が出てきますので,社内の手続きの詳細は就業規則ではなく社内手続き規定などに記載する場合があります。この場合であっても手続きの詳細を示した規定が就業規則とあわせてすぐに参照できるようにしておく必要があります。
いずれにしてもモデル就業規則などをそのまま利用するのではなく,各会社・事業所・支社支店の実情に合った形の手続きマニュアルと考えてその他の作業マニュアル・業務マニュアルなどとあわせて従業員がつねに自分でそれらの条文を参照しながら業務にあたる習慣ができるように規定づくりをしたいものです。