職場でのパワーハラスメント(パワハラ)、セクシュアルハラスメント(セクハラ)、マタニティハラスメント(マタハラ)などの問題は、中小企業にとっても避けられない重要課題です。
厚生労働省の「職場におけるハラスメント関係指針」では、すべての企業にハラスメント相談窓口の設置を求めています。本記事では、中小企業の経営者・人事担当者向けに、相談窓口設置のポイントや実務上の注意点を丁寧に解説します。
なぜ中小企業にハラスメント相談窓口が必要なのか
中小企業は組織が小さい分、人間関係が密接になりやすく、ハラスメント問題が起きたときに対応が難航するケースが少なくありません。
厚労省指針では「相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること」が明記されており、これは法令順守の観点だけでなく、職場の安心感や従業員定着率を高めるためにも不可欠です。
厚労省指針に基づく相談窓口の基本要件
- 相談窓口を明確に定め、従業員に周知する
- 社内の担当者を配置する、または外部機関に委託する
- 実際のパワハラ発生時だけでなく、発生の恐れがある場合にも対応する
- パワハラ・セクハラ・マタハラを一元的に扱える体制を整える
社内で相談窓口を設置する際の課題
担当者の独立性と安全性
担当者を社内で指名する場合、その所属や名前を従業員に周知する必要があります。しかし「相談窓口担当者だから近寄りにくい」と見られ、社内の人間関係から孤立してしまうリスクがあります。
これは本人にとって大きな負担であり、場合によっては新たなハラスメントにつながる恐れがあります。
外部相談機関の活用
社内での設置が難しい場合、外部の相談窓口サービスを利用する方法もあります。費用は月額数千円~数万円程度かかりますが、以下のようなメリットがあります。
- 中立性が担保される
- 専門知識を持った担当者が対応できる
- 社内の人間関係に影響を与えない
特に小規模事業所では、外部委託を検討することが現実的かつ有効な選択肢です。
相談窓口担当者に必要な体制整備
相談窓口は設置するだけでは不十分で、実際に機能させるための仕組みづくりが必要です。厚労省は以下の体制を例示しています。
- 担当者と人事部門が連携できる仕組みを整える
- 相談対応マニュアルを作成する
- 担当者に定期的な研修を実施する
これらを実践することで、従業員から信頼される窓口となり、実効性のあるハラスメント対策が可能になります。
パワハラ・セクハラ・マタハラを一元化する意義
厚労省指針は、相談窓口を一元化することを推奨しています。複数の窓口を作らずに一体化することで、以下のメリットがあります。
- 窓口の重複を避け、運営コストを削減できる
- 情報を一元管理でき、再発防止策に活用できる
- 包括的なハラスメント対策を打ち出し、企業の信頼性を向上できる
中小企業が相談窓口を設置する際の実務ポイント
- 最低限、相談窓口を定めて従業員に周知する
- 社内設置が難しい場合は外部委託を検討する
- マニュアルと研修で担当者の対応力を強化する
- パワハラ・セクハラ・マタハラをまとめて対応できる体制が望ましい
まとめ:相談窓口はリスク管理と人材定着に直結する
中小企業にとってハラスメント相談窓口の設置は負担に感じられるかもしれません。
しかしこれは、単なるコンプライアンス対応ではなく「従業員が安心して働ける職場づくり」そのものです。
適切な相談窓口を整えることで、以下の効果が期待できます。
- 法令遵守によるリスク回避
- 従業員からの信頼獲得
- 人材の定着率向上
- 企業イメージの向上
「ハラスメント対策に積極的に取り組んでいる企業」であることを示すことは、採用活動や取引先との信頼関係構築にもプラスとなります。
中小企業にとって、相談窓口の設置はリスク管理と人材定着を両立する重要な経営課題といえるでしょう。
いずれにしても中小事業所ではなかなか対応が難しく悩ましい問題です。
